インプラント後のメインテナンス方法
こんにちは。歯科衛生士の東山です。
インプラントは、失った歯を取り戻す方法として、自然な見た目、噛み心地も天然の歯とほとんど変わりないため、非常に人気の高い治療法です。しかしインプラントは決して入れたら終わりというものではなく、インプラントを埋め込んだ後も歯科医師や歯科衛生士と協力しながらメインテナンスを継続していくことが大切です。「インプラントはどれくらい持ちますか?」と患者さまから聞かれることがありますが、インプラントをより長く持たせるためにもメインテナンス方法を十分にご理解していただくことが重要です。今回のコラムでは、インプラント後のメインテナンスについて詳しく説明し、インプラントを長く使用して頂けるようなケアポイントなどについてご紹介します。
1、 歯科医院で行うメインテナンス
歯科医院での定期的な検査とメインテナンスは、インプラントの健康を保つために必要不可欠です。歯科医師や歯科衛生士が定期的にインプラントと周囲の組織を詳しくチェックし、プロフェッショナルなクリーニングを行うことが重要です。また、定期的なチェックにより何か問題があれば早期に対処できます。当院では、インプラント手術に問題なく、定期的なメインテナンスを受けられている患者さまはインプラントを早期に失ってしまうことは通常ありません。しかし、定期的なケア、チェックを受けられていたにも関わらず何らかの理由で早期にインプラントが脱落してしまった場合、当院では無償で再度インプラントの埋め込み手術を行わせて頂いております。
●口腔内のチェック
インプラントを長く使い続けるためには、インプラントだけでなく、口の中全体を清潔に保つことが大切になります。残っている歯にむし歯がないかどうか、歯周病がないかどうかは通常の歯科検診でも行うように定期的な検診が必要です。しかし、それだけでは毎回チェックするだけで予防にはなりません。さらに踏み込んだお口の中のチェックが必要です。お口の中には相当数の細菌が健康な人でも存在していますが、その中でも善玉菌、悪玉菌と呼ぶように細菌のバランスが重要です。インプラント手術前や行った後も、唾液検査や細菌検査など、患者さまそれぞれのお口の中をより詳細に把握し、インプラントの予後に影響する要因があればオーダーメイドの予防をしていくことが大切です。
●インプラントの精密な検査
前回のコラムでも紹介したように、インプラント周囲粘膜の炎症により「インプラント歯周炎」になることもあります。歯茎の健康状態(赤い、腫れ、出血)はインプラント歯周炎の初期症状としてもよく見られます。特に歯周ポケット深さの検査は定期的に行う事が必須です。インプラントにも天然の歯と同じように歯周ポケットが存在しますが、その際に用いる検査の器具はインプラント専用の器具を使うことが推奨されます。それもインプラントと粘膜、骨の結合を壊さないためです。ご自身でのセルフチェックも重要になります。いつもと違う違和感などがあれば早めに歯科医院を受診しチェックしてもらってください。当院では、インプラントを埋め込む手術後、骨とインプラントが結合したかを確認する際、術後半年、その後は一年おきにレントゲン写真を撮り、問題がないかをチェックしています。
●専門的なクリーニング
インプラント治療後の定期的な専門的クリーニングはとても大切です。セルフケアで日々のお口の中のクリーニンングを丁寧に行っていても、歯科医院で用いるような専用の器具や薬剤なしでは行えないケアがあります。PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれる、歯科医師や歯科衛生士などのプロフェッショナルによる歯のクリーニングを行います。歯磨きでは落とし切れない歯の表面や、歯と歯茎の境目の歯垢を落とします。インプラントの人工歯は定期的に外す必要はありませんが、汚れの状態や歯の状態によっては人工歯を外してクリーニングを行うこともあります。こうした特別なクリーニングを行うこともインプラントを長持ちさせるための大事な役割です。
また、万が一インプラント周囲炎などのトラブルが起きてしまった場合でも、安全性の高い光殺菌治療PDT(半導体レーザー)を導入し、インプラント周囲の粘膜の炎症をコントロールする処置など、インプラントを長期的に機能させるためのケアー、サポート体制を整えております。
●ブラッシング指導
お口の中の状態をチェックした際、特に汚れが残っている部分を中心に、効果的な歯の磨き方を指導します。特に、歯ブラシでは完全に汚れを落とすことは難しいため、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどの、補助的な清掃用具の使い方を身に付けることが大切です。またインプラントを長く使い続けるためには、日常的に丁寧なブラッシングを心がける必要がありますが、歯の磨き方にも一人一人クセがあり、あまり磨けていない箇所がある場合が少なくありません。
磨き残しやすい部位をチェックし、適切な磨き方および清掃器具についてフィードバックを受け、それを日常のブラッシングに活かしていくことが大切です。
2、 ご自身で行うセルフケア
インプラント治療後に重要なのは毎日のセルフケアです。口腔衛生状態をよく保つことは定期的なクリーニングや検診では維持することが難しいため、歯科医師や歯科衛生士から患者さまそれぞれに適したブラッシング方法と歯ブラシや歯間ブラシなどの補助器具のおすすめ、使い方などの指導を受けることが大切です。
●適切な歯ブラシの選択とブラッシング方法
インプラント周囲の歯茎は天然の歯よりもデリケートと考えて頂いても過言ではありません。歯茎を傷つけないように、硬すぎる歯ブラシはなるべく避けましょう。柔らかめの歯ブラシがおすすめです。また、歯ブラシは細かい毛先の方が清掃しやすく、ブラッシングの際は、ブラシを45度の角度で歯と歯茎の境目に当て、優しく円を描くように磨きます。ブラッシングの回数は理想的には1日3回ですが、日中の仕事中などで難しいこともあると思います。朝晩の2回、1回2分間程度を目標に行ってください。
●歯間ブラシやフロスなどの補助器具の使用
歯と歯の間の隙間には、普通の歯ブラシでは届きにくい細菌や歯垢がたまりやすいです。インプラントも前後に天然の歯がある場合は歯間ブラシやフロスを併用することで、インプラントと歯の間をしっかりとクリーニングしましょう。また、インプラントの人工歯が2本以上連結されていることもあります。その場合はブリッジなどを清掃するときに用いるスーパーフロスと言われるフロスの途中に綿がついた特殊なフロスを人工歯と歯茎の間を潜らせるように清掃するとより清潔な状態を保つ事ができます。また、ワンタフトブラシをイン患者さまにおすすめしています。ワンタフトブラシは先端が小さなペン型になっており、普通の歯ブラシでは磨きにくい場所の清掃に適しています。
●適切な洗口液を使用する
歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどの清掃器具を用いて機械的に汚れを落とすだけでなく、口腔内の殺菌効果や、歯に大切なフッ素が高濃度に含まれた洗口液を使用することも大切です。歯茎の炎症などを抑える成分に特化したものや口腔内の細菌を減らす効果の高いものなど洗口液によって特徴が異なります。歯科医師や歯科衛生士にご自身に合った洗口液を処方してもらうことをおすすめします。
●バランスの取れた食事
インプラントの予後だけでなく残っている歯の予防のためにも、歯に良い食事習慣を心掛けましょう。砂糖や酸性飲料の摂取を控え、カルシウムやビタミンが豊富な食品を摂ることで、お口全体の健康向上にもつながります。当院では、日常の食事バランスのアドバイスを行う一つの指標として、唾液検査を受けて頂くことをおすすめします。ご自身の唾液の状態を知り、食事の取り方など患者さまそれぞれにアドバイス致します。
●喫煙を避ける
喫煙は、インプラントの予後や歯周病などのリスクを高めることがすでに報告されています。禁煙を心がけることでより良いお口の健康を保ちましょう。
まとめ
インプラント治療後のメインテナンスは、治療の成功を長期的に保つために重要です。歯科医院での定期的なチェックや、専門的なクリーニングにより歯科衛生士、歯科医師が責任を持ってサポートさせて頂きます。また、患者さまご自身でのセルフケアの重要性をお伝えしましたが、適切な歯ブラシの選択や歯間ブラシ、フロス、洗口液を使用することで予防効果は一段とアップします。歯磨きや食事の工夫、禁煙など、セルフケアを徹底することで、インプラントの寿命を延ばすことができます。当院では、インプラント後のメインテナンスまでしっかりとサポートさせて頂きます。インプラントをお考えの方は、虎ノ門ヒルズ駅前歯科までお気軽にご相談ください。